いわき靴下ラボ アンド ファクトリー | 株式会社ウエスト
靴下の製造にかける思い。工場の再出発を表現するアートディレクション
2022年、大手メーカーの内製工場として50年の歴史に幕を閉じたいわき市の靴下工場と、120年以上靴下の製造を手掛けながら2003年に自社工場を閉じファブレスに転じた株式会社ウエスト。2社がタッグを組み、2023年1月に「いわき靴下 ラボ アンド ファクトリー」が誕生しました。
工場の歴史と靴下作りへの思い、これからの工場を表現するアートディレクションおよび、サイトのディレクションにFRACTAが携わりました。
経営者の思想を色濃く言語化したいブランドであったために、FRACTAのナレッジには当てはまらないことも多く、より良いものを作ろうと時にはぶつかるような場面もありました。ブランディングディレクションをクライアント、アートディレクションをFRACTAと、それぞれこだわりを持って主導し、粘り強く双方で話し合っていくことで、結果的にお客さまに魅力を伝えられるような道を切り拓くことができました。
現地視察・リサーチ
工場の現地視察、購入体験を通して実感する技術と熱意

200本と240本の針で編み上げる「ハイゲージ・ダブルシリンダー」の編み機を使用した、“脱ぎたくなくなる”上質な靴下。この編み機は限られた工場にしかなく、技術も必要で操作する人材も限られている状況にあります。
工場の現地視察を実施し、機械の見学や工場メンバーの方々との対話を通して、機械を扱える職人が少ない中でも若手の育成に注力されていて、これからの靴下業界を担う技術者たちへ貴重な技術を伝えていきたいという技術継承への熱い想いを感じることができました。
また、実際に工場で編まれた高品質な靴下を体験しました。履いている方が心地よく、脱ぎたくなくなるような感覚を体験をもって実感しました。

コミュニケーション設計
「感性と理性で編む」靴下、「皮脳同根」を表現するアートディレクション

表現の方向性は定めつつも、いくつかの案の中から一つに絞り込む過程を見越し、判断軸の一つとして有効となるブランドアーキタイプを設定。ロゴを含むクリエイティブを選ぶ際の意思決定の判断軸を策定しました。
ロゴデザインの開発においては、デザイン的感覚を表す「感性」、これまで培ってきた「技術」を元に、“感性と理性を掛け合わせ美しいものを作る”という、同工場の魅力であり根底にあるものづくりの姿勢。そして靴下作りにおいて大事にされている「人間の皮膚と脳はルーツを同じくして互いに響き合う」ことを意味する『皮脳同根』をキーワードに、工場を表現するのにふさわしいロゴデザインを検討しました。
最終的に、六根を表す6本の糸(線)の向きで感性と理性を、円の陰影で肌と脳が触れ合った瞬間を表現、両者を組み合わせて靴下の形を形成し、その靴下を向かい合わせると"いわき”の「い」になるシンボルマークを開発しました。

サイトのアートディレクションにおいては、「靴下を作りたい企業にとっての駆け込み寺のような存在になってほしい」といういわき靴下 ラボ アンド ファクトリーの工場への思いを表現するため、工場の拡張性を感じさせるようなイメージを検討。そのため、メインビジュアルにおいては、一本の糸から靴下・工場が生まれるまでの物語が広がっていくスクロールアニメーションを設定。また、「見ている人が工場のこれからを想像できる余白」を意識し、糸の色を変えられる遊びを入れたのもポイントです。 縦方向と横方向のスクロールが混在するサイトとなるため、随所にガイドとなる表示を入れたり、ロゴのサイズを縮小するなど、トーンを崩さずに操作をわかりやすくするためのUIを細かく調整しました。 また、工場に勤務する技術者の人物撮影、および靴下を編む機械や部品の撮影を実施し、いわき靴下ラボ アンド ファクトリーが保有する技術力と感性、働く人の熱意を視覚的に組み込んでいます。

サイト構築ディレクション
今後の運用を見通したサイト設計ディレクション

本プロジェクトではWordPressを使用。縦にスクロールすると横にアニメーションが動く仕組みを取り入れたサイトとなることとは別軸で、更新の可能性がある場所を絞ってカスタムすることで、更新の際に迷わないような管理画面となるよう意識しました。 静的に見える部分でも、いざ更新をするとなれば構築を介さずに更新できる機能を準備するとともに、更新の際に見ていただけるようマニュアルを作成しています。 構成はシンプルながら実用性も兼ね備えたサイトとなりました。

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