市場が細分化し選択肢が増え、SNSの普及で誰もが簡単に情報にアクセスできる現代。企業がお客様に選ばれるためにブランディングへ取り組み、顧客との信頼を醸成することが必須の時代となりました。BtoBにおいても同様に、ビジネスの成長にコミットするブランディングが注目を集めています。
今回はBtoBブランディングの概要をお伝えし、成功事例を交えて戦略設計のポイントを解説します。
なぜBtoBにブランディングが必要なのか
そもそも企業間取引であるBtoBビジネスにおいて、ブランディングは本当に必要なのか疑問を持たれる方も多いと思います。そこでまずBtoBブランディングを実施すべき理由を3つお伝えします。
BtoBにブランディングが必要な理由3つ
- BtoBビジネスは信頼によって選ばれているため
- 長期的なビジネスの拡大に貢献するため
- 短期的なマーケティング施策の成功率を高めるため
1. BtoBビジネスは信頼によって選ばれている
BtoBビジネスでは、商品やサービスが高品質かつ低価格なものが選ばれやすい傾向にあり、それを強みとして訴求する企業も多く存在します。しかし本当にそれだけが選ばれる理由なのでしょうか?たしかにそれは意思決定の一因ではありますが、決定打ではありません。同じような品質・価格の商品が並んだとき、何を基準に選ぶのか?それは、その企業・その担当者が信頼できそうか、ということにあります。
例えばあなたが街で買い物をしたとき、商品はよかったのに店員の態度がどうしても気になり購入を見送った、といった経験はありませんか?BtoB間の取引も同様に、いくら良いものを売っていても、その販売元から買うことへの納得感があるかが決め手になり得るのです。
2. 長期的なビジネスの拡大に貢献する
その企業・その人から買いたいと思ってもらえるようにすること、それはすなわちブランディングです。より多くのユーザーに商品やサービスを使ってもらうためには、BtoBにおいてもブランディングが必要不可欠なのです。そうして企業や担当者への信頼が積み重なることで、そのビジネスは着実に拡大していきます。信頼は一夜で築けるものではありません。地道な積み重ねから得られるものです。ブランディングの効果がみえてくるのが中長期的になるのはそのためです。
3. 短期的なマーケティング施策の成功率を高める
ではブランディングの効果をすぐに実感することはできないのか?というと、そうではありません。ブランディングすることで得られる短期的な効果、それはマーケティング施策を効率よく成功させることにあります。企業としてユーザーからどう思われたいのか、どうあるべきかを定義するブランディングですが、それは信頼感を醸成することともう一つ、企業や社員ベースでの意思決定のスピードを上げることにもつながります。こういう姿を目指すならこの方針が好ましい、という判断基準にもなるのがブランディングです。そのため、マーケティング施策をはじめとする企業内で行われる判断や施策にズレやブレが生じにくくなり、結果的にマーケティング施策の効率的な成功へ貢献します。
BtoBブランディングとは
つまり、BtoBブランディングとは、顧客からの信頼を得て選ばれるための土台作りということです。BtoCのブランディングと根本的な違いはありません。企業やサービスの魅力を顧客へ届けるための活動です。ではBtoBにおけるブランディングとBtoCの違いはどこにあるのでしょうか?
BtoBは購入に対して慎重であり、信頼が重要な要素となる
一つは、商品やサービスへの購入に慎重という点です。BtoBではBtoCと比べると何十万〜何百万単位の商品を購入する機会が多く、一度の購入に対するリスクが高いことが特徴です。そのため、高品質であることはもちろん、“信頼感”がより重要な要素となります。また、価格が高い商品を買う場合にはより信頼感が重視される傾向にあります。
マーケティング施策を最大化させる役目を担う
もう一つは、マーケティングの施策の効果を最大化させることができるということです。大切なことは、自分たちが何者で、誰に対してどんな価値を届けたいのかを明確にすることであり、それらが定義できたときにはじめて、マーケティング施策を最大化させるような効果を生み出せます。
BtoBブランディング戦略の種類
それではここからはBtoBブランディングの具体的な方法について紹介します。ブランディングではどんな価値を届けたいのかによってフォーカスすべき要素が異なります。今回は以下の4つに絞って解説します。
BtoBブランディング戦略の種類4つ
- 企業ブランディング
- サービスブランディング
- 技術ブランディング
- OMOブランディング
企業ブランディング
コーポレートブランディングとも呼ばれますが、企業そのものをブランディングする手法で、顧客ひいては社会に対してどんな価値をもたらすのかを定義することです。
それらを定義することで、この企業は社会課題解決のために行動している、事業を通じてよりよい社会を目指しているのだという期待や共感を生み、信頼の土台となります。この企業が提供しているものなら安心だという信頼感から、一つの商品やサービスを購入した場合に他のサービスへの利用拡大、社内の他部署や他社への紹介など、効果が広く波及しやすいです。
サービスブランディング
サービスブランディングでは、自社が提供する商品やサービスの価値定義を行います。 サービス単体でブランディングを実行することで、それ自体の認知拡大や期待感の向上につながり、購入や契約を促すことにつながります。サービスブランディングにおいては長く使ってもらうための価値定義も欠かせません。リピート購入するためにはどんなことが求められるのか、定期購入してもらうにはどんな情報が必要かなど、細部まで設計することが必要です。
技術ブランディング
技術ブランディングは、自社で優れた技術をもっている企業が実行できるブランディング手法です。技術そのものがその企業の強みであり価値となる一方、社内外でもフォーカスされづらい傾向にあります。だからこそそこに焦点を当て、こんな技術があるからあの商品が生まれる、この技術がないとこのクオリティは出せないなど、その特徴を捉えて訴求することが唯一無二の強みになります。技術は人に紐づくケースもあるため、技術者の個性を引き出す訴求方法も効果的です。
OMOブランディング
企業ブランディングとサービスブランディングの中間的立ち位置にあるのがOMOブランディングです。これはタッチポイントブランディングとも呼べるもので、企業におけるオンラインとオフラインの接点が有機的につながり、一貫した体験を提供する、またそれを訴求する方法です。コロナ禍を経て世の中のあらゆるもののオンライン化が進みました。BtoBにおいても商談や資料送付がオンライン化しています。商談や商品購入などオンライン上でもオフラインと同等の体験を提供するためのブランディングが今後求められています。
BtoBブランディングの効果
このように、BtoBブランディングではフォーカスすべき要素を自社の提供価値や今後成長させたい分野に合わせて決定すると良いでしょう。いずれの要素を選択したとしても、ブランディングによって得られる効果は大きく以下にまとめられます。
- 認知度の向上
- 企業文化の醸成
- マーケティング効果の最大化
認知度の向上
ブランディングを実施することで数値的・感覚的に効果を実感しやすいのが認知度の向上です。フォーカスした要素をブランディングして広めていくことで、これまでとは異なるユーザーからの支持を得たり、既存顧客が長期的なファンになったり、新規・既存顧客とのコミュニケーション接点となります。
企業文化の醸成
ブランディングは社外だけでなく、社内コミュニケーションにも寄与します。自分たちが何者で、どんな価値を誰に提供していくのかを定義することは、社員が顧客をはじめとするステークホルダーとコミュニケーションを行う際や社内の意思決定を行う際の指針となります。共通の指針を社員が持つことでその企業の文化として根付き、より強固なブランディングへと発展していきます。
マーケティング効果の最大化
冒頭のなぜBtoBにブランディングが必要かという項目でも触れましたが、ブランディングにはマーケティング施策を効率よく成功させる効果もあります。企業としてユーザーからどう思われたいのか、どうあるべきかを定義するブランディングですが、それは信頼感を醸成することともう一つ、企業や社員ベースでの意思決定のスピードを上げることにもつながります。こういう姿を目指すならこの方針が好ましい、という判断基準にもなるのがブランディングです。そのため、マーケティング施策をはじめとする企業内で行われる判断や施策にズレやブレが生じにくくなり、結果的にマーケティング施策の効率的な成功へ貢献します。
BtoBブランディングの成功事例
ここからは実際のBtoBブランディング事例をもとに解説していきます。
企業ブランディング事例
SmartHR
SmartHRは人事・労務のクラウドサービスを提供する会社です。テレビCMや広告などでは「社員に、いい。」をキャッチコピーに社員の業務効率化や働き方改善を訴求しています。
BtoB企業において売り上げを上げるためには決裁者である経営層の意思決定を促すことが重要ですが、SmartHRは「社員のことを第一に考えている」と印象を付けたい経営層への訴求として成功しています。
サービスブランディング事例
サイボウズ『kintone』
サイボウズのブランディングというとオウンドメディア「サイボウズ式」に焦点の当たることが多いですが、ここではkintoneについて紹介します。kintoneはプログラミングの知識がなくても、ノーコードで業務のシステム化や効率化を実現するアプリがつくれるクラウドサービスです。提供を開始した当初は、クラウドを販売したことがないパートナーがほとんどでした。そこでkintoneを販売すれば顧客の課題が解決するという道筋を考案し、パートナーへの営業や広告などで打ち出していきました。
技術ブランディング事例
子の日
https://fracta.co.jp/blogs/projects/nenohi
プロ向けのオーダーメイド包丁を製造する企業。国内の顧客へ技術の高さと商品の魅力を伝えるために、オンラインサイトをものづくりへのこだわりや技術を伝える接点としてリニューアル。ものづくりの現場や料理人が実際に使用する現場の臨場感や、研ぎ澄まされた緊張感、無駄のない美しい所作を表現することで、一般的な鍛治職人の伝統的な表現とは全く異なる、子の日らしいクラフトマンシップが表現されています。オンラインサイトの目的を商品販売ではなく技術を伝えることに振り切ったことで洗練された情報の提供を実現しています。
OMOブランディング事例
伊千呂
https://fracta.co.jp/blogs/projects/ichiro
化粧板メーカーが取り組んだOMOの事例です。伊千呂ではすでにコーポレートサイトは存在していましたが、よりオンラインの体験を高めるためにリニューアルを実施。サンプル請求の運用フローをオンラインで完結できるよう、サンプル帳のデータ化を実現しました。また、設計事務所やデザインに関わる方が図面内に取り込めるようにするなど、使い手の利便性向上にも貢献しています。
BtoBブランディングで叶える信頼できる企業
BtoBブランディングの戦略について事例を交えてお伝えしました。BtoBブランディングは、企業が顧客との信頼関係を深めるために有効な手段です。あくまで一つの手段であり、大切なことは自社の顧客を見つめ、一度のブランディングで終わることなくその関係性を深めていくことです。ぜひここまでの情報を参考に自社のブランディング、継続的な顧客との信頼関係の構築に取り組んでみてください。