Shopifyの思い出 〜黎明期から見る進化〜

Shopifyの思い出 〜黎明期から見る進化〜

こんにちは。FRACTAのResearch & Implementation(RI)局の美里です。

この記事は「Feedforce Group Advent Calendar 2023」の14日目の記事です。

13日目は株式会社フィードフォース えーちゃんさんによる今年1.5万回シャッター切ってた話」でした。日の落ちる位置を把握して撮影するなんて、とても奥が深いですね…四季を感じる素敵な写真が掲載されていますので、ぜひご覧ください◎

 

さて、今日はShopifyに日本での黎明期である2018年から携わってきた私が、日本におけるShopifyの変遷と個人的な思い出を語ろうと思います。よろしくお願いします。

2018年 夏、Shopifyと出会う

Shopifyと出会う前、FRACTAではShopifyとは別のプラットフォームでEC構築をしていました。デザインの自由度、機能のカスタマイズ性は高く、クライアントの期待に応えやすい反面、保守管理が非常に大変なものでした。

そして2018年夏、代表が突如として持ち込んだのが“Shopify”です。当時のShopifyは、管理画面はかろうじて日本語でしたが、細かいところやヘルプページは英語でした。アプリも日本製は皆無に近かった記憶です。しかしながら、その性能は当時EC構築で使用していたプラットフォームよりも遥かに高いものでした。(特にフロントが素晴らしい…!ノーコードで構築もできるし、細かいところはHTML/CSSで調整可能!そしてliquidという独自言語を使えば、あらゆる動的表示ができるなんて神の所業…!)

そんなShopifyとの出会いを経て、ストア構築を開始。構築以外にも、クライアント向けのマニュアルを作成したり、商談に行って見積もりしたり、構築プラン設計やフローを考えたりと、Shopifyに関する様々なお仕事をさせてもらいました。Shopifyとはもう友達。

そんな友達でもあるShopifyの悩ましい問題と進化を遂げた姿について紹介していきます。

日本の文化と合わない、ポイント機能

実店舗・EC問わず、日本のショッピング文化でメジャーなものと言えば、ポイント機能(貯めたポイントをそのまま割引額として使える)ですよね。

Shopifyは今も昔も標準のポイント機能はありません。黎明期では、日本の文化とマッチするポイントアプリはなく、近しいアプリ(ポイントを貯めてクーポンと交換する)を使用するか、ポイント機能を諦めることが大半でした。

現在は、日本製のポイントアプリが複数登場しており、ストアにマッチするアプリを選んで導入することができるようになりました。

代引き手数料徴収できない問題

そしてもう1つ、日本のEC文化である「代金引換」について語りたいと思います。

こちらも今も昔も標準で“代引き手数料を徴収する機能”はありません。(※「代金引換」の選択肢を用意することは可能。手数料を購入金額に含めて徴収できない)最近はShopify問わず、決済方法に「代金引換」を用意していないストアも増えてきましたが、黎明期では既存ストアから継続して用意したいストアも少なくありませんでした。

そんなときに活躍したのが、アプリ「Advanced Cash on Delivery」です。特定のソースコードを特定の場所に仕込むことで、代引き手数料を配送手数料に乗せて徴収することができたのです(※現在は不可)。

配送手数料に乗せる方法は現在も使われており、特定の日本製アプリで同様のことが可能ですが、そもそもShopifyを使用するなら「代金引換」はしないという選択が増えてきているように思います。

未だに最適解が見つからない、お問い合わせフォーム

Shopifyストア構築の際、毎度悩ましいのがお問い合わせフォーム問題です。

標準のお問い合わせフォームといえば実にシンプルで、お客様が送信したら、マーチャント側に通知が届くのみ。日本でよくある「お問い合わせ内容確認ページ」や「お問い合わせ完了ページ」「お問い合わせ完了メール」すらありません。

標準を使用しているマーチャントは少数で、大半はアプリを使用していますが、アプリもあまり日本向けの仕様にはなっていません。マーチャントの希望も多岐に渡り、用途別で複数のフォームを作りたい、フォームデザインはストアデザインと揃えたい、各お問い合わせに対してステータス管理したい、などなど…。

Shopifyでお問い合わせフォームを作るならコレ!というのがなく、マーチャント毎にマッチするものを都度模索していますが、選択肢は増えています。日本製の外部サービスを使用する方法もあります。

他にも悩ましい存在といえば、「アカウント退会」(Shopifyを触ったことのある人なら言わずもがな、お客様側から退会できない)や、ストア移行時の最高難易度を誇る「注文データの移行」などなどありますが、問題系のお話はここまでにします。

フロントの大転機!テンプレート登場

ここまで、アプリや運用でなんとかしてきたことを語りましたが、もちろんShopify側も進化しています!

2022年、私が育休から復職すると、「Online Store 2.0」なるものが…そう、「テンプレート」の登場です。テンプレートは特定の商品ページやブログ記事だけ見た目を変えたい…といったときに活躍します。

テンプレートのない時代は、それはもうゴリッゴリにliquidカスタマイズしていたので、社内にエンジニアかコーダーのいないマーチャントさんはパートナーに頼る他ありませんでした。それが、ノーコードでできるようになったのは大きな進化ですね!

神機能!メタフィールド・メタオブジェクト

もう1つ大きな進化といえば、「メタフィールド」「メタオブジェクト」の登場です。

メタフィールドによって、これまで商品ページのソースコードに直書きしていた「セール」「期間限定」「要冷蔵」「ラッピング:あり/なし」などの文言を管理画面から変更できるようになりました(そのように構築していることが前提の話です)。

そしてメタオブジェクトは、今まで静的ページで作成することが多かった「店舗情報」「スタッフ情報」などを、データ管理+ページ作成を可能にしました。Shogun(ページビルダーアプリ)いらず!

「メタフィールド」「メタオブジェクト」の活用方法については以下記事をご参照ください。

コーディング不要! Shopifyブログ記事に関連商品を表示する方法

Shopifyの進化によりアプリ・カスタマイズいらずに

上記で述べたように、Shopify自体の進化によって、今までカスタマイズやアプリが必要だったものも、徐々に不要になってきました。他にも、Plusプラン専用アプリがPlus以外でも使えるようになったり、既存アプリと同様の機能を持つShopify公式アプリ(基本無料)の登場により、費用も抑えられるようになりました。

過去に「タフィールドを使って商品ページにカラーバリエーションを表示する方法」を書きましたが、Shopify公式アプリ「Shopify Search & Discovery」のアップデートにより、今後は簡単に実装できそうな予感です!

システム以外の進化

もちろんシステム以外の進化もあります。

ストア構築を始めた頃は、わからないことがあってShopifyへ問い合わせしたくても、フォーム自体あったっけ…たしか英語で相談して、数日後に英語で返信がきたような…という状況でしたが、今は日本語で返信がくるのですよ!(返信も早い!)

当時英語だったヘルプページも日本語化していたり、アプリストアで日本向けアプリのカテゴリができるなど、日本のマーチャントが増えるとともに、日本向けの対応が進んだ印象です。また、Shopifyの中の人とパートナーとの繋がりも強くなったと感じました。

Shopify界隈のコミュニティ拡大

変化があったのはShopifyそのものだけではありません。

2018年〜2020年頃までは日本のパートナー企業はあまりいなかったShopify。2022年に復職すると驚くことが!日本のパートナー企業が激増、企業だけでなくフリーランスも参戦、さらにはShopify専門の教育サービスまで登場しているではありませんか。

そして、もっと驚いたのが、彼らの繋がりの強さです!同業だと競合他社、ライバル、距離を置いてお互い観察みたいなイメージを持ちますが、Shopify界隈の人たちはみんな協力し合っているのです。

各所でセミナーも開催されており、私も登壇の機会をいただいたことがあります。

事業者とパートナーが本音で語るDX - 次世代エンタープライズコマースプラットフォーム Shopify Plusとは -

Shopify界隈のみんなで盛り上げていこうという熱意を感じました!

「Shopify博士になりたいわけじゃない」

最後に私自身のShopifyに対する心境の変化を語りたいと思います。

2018年夏の話に戻ります。「Shopify博士になりたいわけじゃない」という言葉は、Shopify事業を一緒に始めたメンバーから出たものです。当時、急激に既存業務からShopifyにシフトし、管理画面と睨めっこする日々が続きました。業務がShopify一色になり、スキルがShopifyに偏ることに対する不安が渦巻いていたのかもしれません。

私はその言葉に対して共感しつつも、Shopify絶対流行る!という謎の自信と、なによりその魅力的なシステムに夢中でした。日々Shopifyの知識を得てスキルが向上していくことに楽しみを感じ、それは産休に入るまで尽きることはありませんでした。

復職後、私のShopifyスキルは初期化されたので、おさらいと休暇中のアップデートを追い、Shopifyとの楽しい日々が再開します。ところが、スキルを取り戻していくうちに、あの言葉が思い出され、日に日にその影が増すようになりました。まだまだ未踏の領域があるものの、「これはShopifyの中での話だ」と考えては、素直に楽しむことが難しくなりました。恋人の“倦怠期”に近いかもしれません(笑)。

そして今もこの倦怠期を抜け出せていませんが、少し考え方を変えてみました。

私はShopifyの仕事を“博士”になるためにやっているのではなく、“冒険者”として、Shopifyというマップを駆け巡り、スキルを習得しているのです。元より我々はShopifyの冒険者だったのですね。

Shopifyは猛スピードでマップを拡張してくれてますし、冒険できるところはまだまだあります!さらに冒険の記憶とスキルは、別のステージ(他のプラットフォームやWebサービス)でも力を振るうことができます。

Shopifyがある限り、マーチャントがいる限り、旅は続きます。そんな“冒険者”としての心構えで、今日も管理画面と向き合っています。

15日目は、株式会社フィードフォース みちかさんの記事です。 今年初めてした100のこと”を書かれるそう。1年で100もあるなんてすごいですね!お楽しみに。