【EXPOトークセッションレポート】セレンディピティを創出する、「Makuake STORE」のUI/UX

【EXPOトークセッションレポート】セレンディピティを創出する、「Makuake STORE」のUI/UX

こんにちは、CSV局の花沢です。2023年6月28日(水)〜6月30日(金)に東京ビッグサイトにて日本最大のコンテンツビジネス総合展【コンテンツ東京2023】広告クリエイティブ・マーケティングEXPOが開催され、FRACTAではプロジェクトを共にしたブランド担当者さまをお迎えしたトークセッションを実施しました。本記事では、マクアケさまをゲストに迎えた回のレポートをお届けします!


FRACTA Professional Service事業本部 1局 局長の野村をモデレーターに、株式会社マクアケ ストア事業本部 部長 「Makuake STORE」事業責任者の山下氏がスピーカーとして登壇。2022年9月に新サービスとしてオープンしたECプラットフォーム「Makuake STORE」におけるブランドの世界観を演出するためのプロセスや、外部連携についてお話いただきました。


ーまずは「Makuake STORE」について教えてください。

山下氏:「Makuake STORE」は、「Makuake」から生まれたユニークな商品をいつでも買えるECプラットフォームです。 「Makuake」ではプロジェクトページの公開期間が決まっているため、かねてよりユーザーから「商品を買いそびれてしまった」「公開期間後にメディアで商品を見た。この商品はどうやったら買えるのか」というお声があり、それを受けてまずは「Makuake」内にEC機能を設けたのが始まりでした。そこから売上も順調に伸びてくる中で、「Makuake」がベースとしているクラウドファンディングのモデルとECとでは形式が異なることもあり、今後の成長を見据えて独立したECサイトとして立ち上げることになりました。


https://store.makuake.com/

ー形式の違いについて、「Makuake」では実現できないことがあったのでしょうか?

山下氏:ユーザーの体験としても大きなポイントなのですが、テーマを設定して商品をレコメンドすることが難しいというのはありました。例えば、母の日に向けて母の日ギフトを、暑い夏に冷感グッズをという感じですね。「Makuake」では日々新しいプロジェクトが始まるので、常に「アタラシイもの」が訴求されます。一方で、商品の訴求を真新しさだけでなくニーズー我々は気分と呼んでいますがーに合わせた切り口でも紹介していきたいという思いがありました。そこから「Makuake」とは異なるコンセプトのサイトが必要だというところに行き着いたかなと思います。うちには本当に良い商品がたくさんあるので。

 

ー私自身、「Makuake」での応援購入受付期間が終わっているともう購入できないというのは一ユーザーとしてもったいないなと感じていました。ほしい商品の情報がいつでも見れて、いつでも買える状態を作っておくことは大事だと改めて気づかされました。

 山下氏:今回プラットフォームにはShopifyを採用しましたが、元々運用しているシステムとの切り替えによるサイトの停止は1日もありませんでした。いつでも買える状態という点ではサイトをスムーズに載せ替えられたことは大きかったように思います。フルスクラッチという方法も検討はしましたが、ECサイト構築のプロセスとしては拡張性が肝だと感じていました。Shopifyを活用する方法はFRACTAの河野さんに相談する中でアイディアとしてもらい、拡張性においてもスピーディーに対応できることもあり採用しました。


ー実際にShopifyでECサイトを構築していくにあたり、苦労した点はありますか? 

山下氏:「プロジェクト」の表現ですね。「Makuake」ではものづくりをしている方々を「実行者」と呼んでいて、「プロジェクト」はその実行者の商品を含めた取り組みのことを指しています。一人の実行者が複数の商品を展開している場合は複数プロジェクトが紐づくのですが、これが一般的なECサイトの構造では表現しにくいところで、調整に苦労したポイントです。

ユーザー体験の観点からみても、実行者のファンでその人の商品を買いたいと思って訪問する人にとってはプロジェクトがあるほうが見つけやすいですし、ECサイトとして自分がほしい商品を検索したい人にとってはもちろん商品が大事になる。どちらを推すのか、もしくは出しわけるのかといったところもなかなか難しかったですね。

ー「Makuake STORE」におけるセレンディピティの創出はどう設計していきましたか?特に”思い入れタグ”と呼んでいる12個のキーワードがありますが、これがどのように作成されたかというところからお伺いできれば。

山下氏:「Makuake STORE」は、その中で購入できる商品は「Makuake」でサクセス(応援購入金額の目標を達成)したものだけという特徴があります。サクセスしたプロジェクトの購入者(サポーター)にアンケートを取っているのですが、それらを全て確認し、一つひとつの商品がどういう理由で買われたのかを見ていきました。すると

「いつも頑張ってくれている奥さんのために買いました」「これは絶対に誰も持っていないから次の機会にみんなに見せびらかしたいと思います」

というコメントがあったりするわけです。それらを分類した結果がこの12個のキーワードでした。つまり、どういう思い入れがあって商品を購入したのかというところから付けたタグなんですね。それから当時1万6000個を超える商品全てにタグを振り直すということをしました。既に購入した方の購買理由は、次に買う方の購買動機や購買促進に繋がると考え、それらをタグから探せるようにしたというところです。 


ーユーザー分析を定期的に重ね、ユーザーの声をサービスにきちんと反映していくことは地道ですが、実際に行動していくのはなかなか難しいと思います。 

山下氏:「Makuake」はECとしては特殊なサービスなので、その特徴を踏まえたECサイトのあり方って正直正解がないなと感じています。とはいえ、購入したり商品を見ることを楽しんでくださっているファンの方がいるので、そこにしか答えはないとも思います。みなさん最初はECサイトとして使っていただくのですが、次第にニュースサイトを見るような感じで、今日は何か新しいものが出てないかなとチェックしている。そうしたメディア的な楽しさを拡張する体験がつくれないかなと。ほしいものがあるわけではない人たちに「なんだかついほしくなっちゃった」という体験をつくるにはどうするのが良いだろうかと、それがまさにセレンディピティの創出に結びつきました。

 

ーセレンディピティ以外にも、このサイトにはユニークな試みがあります。それが「お気に入り記事」です。マイページにいけばいつでも自分がお気に入りにした記事を見ることができる機能。あまり見かけない機能ですが、これを採用したきっかけはありますか?

山下氏:音楽アプリの『Spotify』にヒントがありました。Spotifyでは、例えば「雨の日に聴きたい曲」と検索するとプレイリストが出てくることがありますよね。そこからアイディアをもらって、気分というかテーマで商品と出会えるようにしたいなと思ったんです。プレイリストってそれそのものをお気に入りにしたいと思うので、「Makuake STORE」ではブログの記事をお気に入りにできるように実装してもらいました。 

ー今回はShopifyをヘッドレスコマースでかなり作り込んでいます。この実現には外部との連携も重要な要素でしたが、外部連携における良かった点と苦労した点をそれぞれ教えてください。 

山下氏:何かやりたいと思ったものを実現するスピードは圧倒的でした。体感的にはこれまでの半分ぐらいのスピードで済んでいます。Shopifyの機能や仕様をそのまま活用するというわけにはいかず、カスタマイズになることも多くてその調整には苦労しているのですが、それでもこのスピード感というのは採用して本当に良かったなと思います。 

ーバックエンドとアプリの繋ぎこみは調査が必要だったり実現に時間がかかったりするので、ヘッドレスコマースはそのあたりを相談できる外部パートナーと良い関係を築いていくひとつのきっかけになるのかなと思っています。 


ー最後に今後の展望を教えてください。 

山下氏:ユーザーがふらっとサイトを訪れたとき、いかに商品と出会ってもらえるかという体験設計にはまだまだ余地があるかなと思っています。あとはギフト需要も多いので、もう少しそこに寄り添った設計や機能強化は取り組んでいきたいテーマです。

 
ーギフトはちょっと気の利いたものをあげたいなというとき、「Makuake STORE」は本当にぴったりだなと思います。正直このプロジェクトに携わるまで、「Makuake」さんで食品ジャンルをしっかり見たことはなかったのですが、試してみたいものがとても多かったです。以前、山下さんにお勧めいただいたレモンのはちみつ紅茶は試してみたらとてもおいしくて、家族で楽しめました。 

山下氏:美味しいですよね、カロリー0ですし。

ーそうした魅力あふれる商品が多いなかで、体験設計をより良いものにしようとする姿勢は、改めて学ぶべきことでしたし他の事業者さんも参考になる点かと思います。



マクアケさんはアジャイルしやすいShopifyの特性を活かし、スピード感をもってアップデートに取り組まれていました。Shopifyでできることと自分たちが実現したいことが明確であり、Shopify活用の好事例としてご紹介させていただきました。山下さん、ありがとうございました。

Makuake STOREさんの事例詳細はこちら:https://fracta.co.jp/blogs/projects/makuake-store

FRACTAではブランドのUI/UX設計やオンラインコミュニケーション設計を支援していますので、「Makuake STORE」さんの事例をみて興味をお持ちいただいた方はぜひお気軽にお問い合わせください◎