白の日によせて

白の日によせて

こんにちは。FRACTAのアートディレクター/デザイナーの西澤です。


本日4月6日は白の日。「し(4)ろ(6)」(白)と読む語呂合わせから、美肌への意識を生むきっかけの日とすることを目的に、一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されたそうです。

私のようなグラフィックデザイナーが「白」について考える時、どうしても脳裏に浮かんでしまうのは、グラフィックデザイナー原研哉さんの著書、『白』です。

無印良品や松屋銀座のクリエイティブを手がけてきた同氏が2008年に出版したこちら、少なからず影響を受けたデザイナーも多いのではないでしょうか?

この本で原研哉さんは多種多様な視点から白を紐解き、可能性としての「空白(エンプティネス)」の考え方について帰着していきます。

文章もさることながら装丁も美しい『白』。

白の日にちなんでその内容に思いを馳せながら、ブランドクリエイティブにおける「白」の小話をまとめてみました。

 

機能的な「白」

白衣は医療現場にて、衛生概念が重視されるとともに生まれたユニフォームです。常に清潔を保つため、汚れが目立つという合理的な理由から「白」という色が用いられました。

医療現場で白が用いられるようになってから、ブランドデザインにおいては清潔感や信頼感を与える色として定着しているように思います。

基礎化粧品やドクターズコスメのブランドではそのイメージに則り、「白」を基調とした配色展開をおこなっている印象がありますね。文字通り「SHIRO」のホームプロダクトシリーズや、「meeth」などが代表的ブランドとして挙げられるでしょうか。

〈参考〉
https://shiro-shiro.jp/
https://www.meeth.jp/brand_list/meeth/

余談ですがこの「白衣」、お医者さんが着用しているイメージはありつつ、最近では濃紺や薄水色のユニフォームや、最も衛生が重要視されそうな手術着に至っては緑色の印象がありませんか?

 

合理的理由として「補色残像(特定の色を見続けたあとにその色が消えると、反対色である補色が残像として見える現象)」を緩和する、というものがあるようです。

手術現場では血液のあざやかな赤色を長く見続けるため、視線を動かすと赤の補色である緑色の残像が現われます。こちらが業務に支障をきたすことが問題になり、白のユニフォームは見直されていったようです。

また、「白」が無彩色であるがゆえの「冷たい、無機質=怖い」という印象も一因です。

私をはじめ、病院嫌いは結局ここに紐づいているのではないでしょうか…現場の「あたたかい、やさしい印象」の白衣を求める声から、白以外のユニフォームは広まっていきました。

患者側の印象を配慮して色を変更する、デザインの文脈はこういった医療の現場でも積極的に利用されています。

色の持つイメージは、白衣のように、長い人類の歴史の中で育まれてきたものです。時代が変わるとともに、色の持つイメージもガラッと変わっているのかもしれません。

医療が進歩し、痛みを伴わない治療も増えていけば数十年先の未来に病院嫌いはいないかもしれませんね。

紙の「白」

「紙は白く、そこに書かれる文字は黒い」

書く、という文化が生まれてから定着してきたこの関係性は、媒体が紙からディスプレイに変わっても多くの場所で引き継がれています。

しかしこの関係性も、時代の移り変わりとともに変化を迎えているように思います。

iPhoneやAndroidに始まり、SNSやあらゆるコンテンツで「ダークモード」という表示が浸透してきました。白が大半を占める画面はディスプレイで表示すると必要以上に眩しく、長時間見ていると目が疲れるという理由が大きいようです。

また、ロービジョンの方々にとっては「白地に黒の文字」より「黒字に白の文字」の方が読みやすくなる傾向があります。全ての人にとって優しいWeb設計を目指す上では参考になりそうですね。

ブランドデザインにおいても「紙」からの解放の影響は大きく、ブランドカラーをどういった色の上にのせて表示するのか、という選択肢が増えました。

ユニクロ、Netflixはどちらもブランドを象徴するカラーが「赤」ですが、Netflixはコミュニケーションの上で「黒」という地の色での表示を多く用いてます。コンテンツが黒字の方が映えて見えるから、という合理的理由に由来するものかと思いますが、映画館を訪れた時のようなワクワク感の演出にもつながっていますね。

Netflixのようにウェブでのコミュニケーションを主軸とするブランドにおいては、「白」という地の色に縛られすぎる必要はないのかもしれません。

デザインの「白」

先で触れた原研哉さんの『白』で私が印象的に残っている部分は、長谷川等伯の『松林図屏風』の話です。

詳細は割愛しますが、長谷川等伯はこちらの絵で「風景の全てを描き切らずして、松の木の周りにある空間を表す」という魔法のような表現を用いました。

あえて描かないことで見る側のイマジネーションを覚醒させる、ある種挑戦的でクールな手法ですが、私自身この感覚はブランドのクリエイティブをつくる上でも大切な考え方だと思います。

プレゼンする上で私たちは、そのデザインがいかに合理的であるかを解説し、それが絶対的な正解であるように話します。しかし当然のことながら一般のユーザーはそのプレゼンを聞くわけでもなく、結局はデザインをなんの説明もなく見るユーザー側に受け取る印象を委ねる形となりますね。

見る側は自由にそのデザインを解釈し、そのデザインが好きである理由を自分なりに見つけます。であればデザインには受け手が想像で補う余白があった方が、多くの人に愛されるのではないでしょうか。

愛されるデザインのためにどこまでを筋道立てて設計し、どこを余白とするのか、デザイナーの技量が試されるところですね。

原研哉さんの手がけたデザインたちのように、人々の生活に馴染みながら愛されていくクリエイティブを生み出せるよう、私自身精進してまいります。

 

− 2023年4月6日、白の日によせて


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