こんにちは!FRACTA RI局です。
みなさんは、コカ・コーラのCocaはコカの葉の“コカ”という話を聞いたことがありますか。RI局では日々様々なブランディングに関する研究や調査も行っているのですが、今回の記事では、歴史あるコカ・コーラの起源とブランドに起こった事件を辿り、現代のブランディングに活かしたい、応用したいことを考えてみます。
コカ・コーラのCocaは、コカの葉が由来?
最初にコカ・コーラのレシピをつくった人は、ジョン・S・ペンバートンという薬剤師でした。彼は当時流行していた“特効薬”(モルヒネの代用品)で稼ぐため、コカの葉で薬の開発をしていました。
コカの葉から作られるコカインは、当時中毒性は認識されていなく「コカ・ワイン」という商品も販売されていたくらいで、1860〜1880年には「万能薬」として誰もが口にしていたそうです。
そのコカの葉と、薬効のある種子コーラの実、苦みを和らげるための複数の芳香油(ネロリ油、シナモン精油、ナツメグ油、レモン油、ライム油、コリアンダーなど)と大量の砂糖を加えて作った“特効薬”が当時のコカ・コーラでした。
材料にコカの葉とコーラの実の2つの有効成分を元に作られたことから、暫定で名付けられた「Coca・Cola」という名前が、今日もブランドの名前として使われています。
参照)「ザ・フード 〜アメリカ巨大食品メーカー:有名ブランド誕生の真実」(ニック・ホワイト監督:2019年)
味の調整『ニューコーク騒動』からみる、ブランドの愛着の正体
コカ・コーラの調合は当時社内で「聖なる牛(The Sacred Cow)」と呼ばれ、絶対的なものだったそうです。この絶対的な“調合”がある中、ニューコーク騒動と呼ばれる事件が起こります。
ニューコーク騒動とは、1985年に19万人にも及ぶ消費者味覚テストを行い開発した「ニューコーク(New Coke)」を発売した時に起こった、大きな抗議騒動のことです。
発売前に実施した味覚テストの結果では、新旧2つのコークを飲み比べた人のうち、61%が改良コークのほうが美味しいと答えていたにも関わらず、発売後1週間もしないうちに味を変更したことに対する抗議の電話が毎日1000件以上殺到したのです。
抗議は止まず「アメリカン・オールドコーラの愛飲者協会」という団体が設立されたり、コークの味を戻すよう求める集団訴訟も起こったと言います。
参照)
『コカ・コーラ帝国の興亡ー100年の商魂と生き残り戦略』マーク・ぺンダグラスト(古賀林幸 訳、徳間書店:1993年)
『1からのブランド経営』石井淳蔵, 廣田章光(碩学舎:2021年)
オールドコークファンの“愛着”の正体は何か?
『コカ・コーラ帝国の興亡』(マーク・ペンダグラスト著)によると、
人々は人生のあらゆる場面 〜初めてのデートとか、勝利や敗北の瞬間とか、楽しいグループの老い淡いとか、物思いに沈む孤独とか〜 に結びついた、このアメリカを象徴する飲料を敬っていた。
とあり、また、
『1からのブランド経営』(石井淳蔵, 廣田章光 編著)では、
コークは、その人たちの人生のかたわらにいつも寄り添っていた。そして、その人たちの人生に刻まれたさまざまの思い出の記憶に溶け込んでいたのである。経営陣には思いも及ばなかった強い愛着の感情が、消費者の心のなかに育っていたのである。
と、考察しています。
オールドコークは、ファンの人生にとって欠かせない1つのパーツだったのかもしれませんね。
ブランディングは、消費者にとって“優れていること”をKPIにすることが必ずしも正解とは限らない
ニューコーク騒動は、現代とは時代背景がかなり異なっているため一概に現代のブランドに当てはめ鵜呑みに考えることは難しいかもしれません。 しかし“客観的な美味しさ”がブランド貢献度が高い熱狂的なファンに受け入れられなかった事象は、現代に通ずるものがあると考えています。
当時の味覚テストの実施方法を熟知しているわけではないですが、上記のニューコーク騒動から学びになることとして、以下のように考えます。
【学び】
- 調査は母数(n)だけではなく、ユーザー層別に調査する方法を自分の“引き出し”として持っておく(コカ・コーラのテストではやっていたのかもしれません)
- ファンが購入に至る真意(インサイト)を探求し続ける
- 生活にブランドが浸透することで、モノの機能を超え「ブランドと過ごしてきた時間」がブランドの愛着に変わる場合がある
- “客観性”を取り入れることが必ずしも成功につながるとは限らない (かもしれない)
【今後、考えたい問い】
- ブランドへの“愛着”=“主観性”と言い切れるか
- ブランドとして“進化させるべきこと”と“守り続けるべきこと”を考えるための枠組み(勝ちパターン)はあるか
私たちFRACTAではよく「ブランドは生きもの」というお話をします。これは、時代に合わせてブランドも進化し続けなければ生き残れないと考えているからです。
特にVUCAと言われるこの時代をブランドが生き抜くには、日々適応力が求められます。しかし何をもって“進化”と言えるかは、アクションして結果が出ないとわからない…こともあります。
不確実なことが多い中、新しいことにチャレンジするのは大変勇気がいります。それでも差し迫る危機を察知し一歩前へ踏み出そうとしているブランドさん、覚悟を決め前進しようとする全てのブランドさんにとって、力強い一歩を踏み出せるよう、その原動力となるパーツを1つでも多くご提供できるよう尽力していきたいと考えています。
[参考]